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  4. 【深化するヤマハ】vol.2 デジタルを安全な走りに活用する

ビギナーやリターンライダーを対象として全国で開催され
人気を呼んでいる「YRA大人のバイクレッスン」
このたび新機軸として、受講者の走りを可視化する
ヤマハ・ライディング・フィードバック・システムが導入された
レッスン前とレッスン後で自分がどう成長したかを客観視でき
公道でのライディングに役立ててもらう狙いだ

 

ライディングを可視化し、安全向上に役立たせる

単独で自由に移動できるバイクの魅力が、今、再認識されている。コロナ禍にあって、バイク業界は新車、中古車、用品、メンテナンス、そして免許の新規取得者数など、軒並み上向きだ。

ヤマハの調べによると、三密を避ける移動手段として親や家族のバイクに対する理解度が上がり、それが購入や乗車動機につながっているようだ。

だが、手放しで喜んでもいられない。連日のようにバイク事故増加が報じられ、警鐘が鳴らされてもいる。バイクの認知度が高まり、新たに、あるいはあらためてバイクに乗る人が増えている一方で、ライダーのスキル低下が否めない。

ヤマハは2015年から「YRA(ヤマハライディングアカデミー)大人のバイクレッスン」を開催している。「免許を取得したけど公道を走るのが怖い」「久々のバイクで自分の運転に自信がない」といったビギナーやリターンライダーを対象に、公道を安全に楽しく走ることを狙いとしたハードルの低いレクチャーだ。

バイクの乗り降りから始まり、スロットル、ブレーキ、クラッチなど操作系の扱い方をていねいに説明し、発進停止の反復練習に力を注ぐという徹底ぶり。

まさに今、コロナ禍の「迷えるライダーたち」のサポート役として、交通安全を実現するために重要な役割を果たしている。

この「YRA大人のバイクレッスン」に、新機軸が投入された。ライディング技術を視覚化し、スキルアップを支援する「ヤマハ・ライディング・フィードバック・システム(YRFS)」だ。「YRA大人のバイクレッスン」で使用するレンタル車両にGPSデータロガーを装着し、レッスン開始直後と、レッスン修了時の2回、参加者の走行データを集積。後日、分析結果をまとめたフィードバックシートを送付する、というシステムだ。

言ってみれば、レッスンの通知表が送られてくるようなもの。レッスンを通してどれぐらい自分が成長できたかを、視覚的に理解できる。

ただし、学校の通知表とはまったく異なり、出来不出来を評点で表すものではない。示されるのは、より安全なライディングを実現するための注意事項だ。

スクールやレッスンは、とかく「さらに上達するため」「さらに速く走るため」というステップアップ志向がつきまとう。だがYRFSの狙いは別のところにある。

YRFSのフィードバックシートは、あくまでも自分の今のライディングを冷静に客観視するためのものなのだ。公道を安全に走るにあたって、今の自分の注意点がどこにあるのかを知っておくことは、大いに役立つ。

「YRA大人のバイクレッスン」のレッスン中、インストラクターからはていねいなアドバイスがもらえる。それがどれぐらい自分の身に付いたか、あるいはどこがまだ課題として残っているかを知っておけば、本番である公道走行にあたってメリットとなるだろう。「ステップアップを促すものではない」ということ。これはY R FSを理解するうえで、大きなキモとなる。

「YRA大人のバイクレッスン」は、そもそもの成り立ちがライディングに自信がないライダーを対象としている。サーキットでラップタイムをコンマ1秒刻んだり、ライテク向上を図るものではない。

YRFSは、レッスンの前後での自分の習熟度合いを示す指標として機能させることが狙いなのだ。あくまでも主体はレッスン内容そのもの。公道を安全に走ることがメインテーマだ。YRFSフィードバックシート上の「ポイント稼ぎ」が目的になるようでは、本末転倒である。だから現時点では、インストラクターからのていねいなコメントを含め、後日発送というかたちを採っている。

参加者のマインドとしては、レッスン中にその場でYRFSフィードバックシートを見ながら修正していきたい、と思うかもしれない。だがそれは、一定以上のレベルに到達している人の話だ。バイクに乗ることでいっぱいいっぱいになっているライダーに、その場であれこれ言うことはかえって混乱を来す可能性がある。

しかも、スタート以来6年を経て磨き上げられたレッスンのカリキュラムに、時間的、あるいは人的リソース的な変更を強いることにもなる。ヤマハはそれをよしとはしない。

「YRA大人のバイクレッスン」ありき。YRFSはその通知表であって、完成度の高いレッスン内容そのものを左右するものではない、という考え方だ。レッスン内容と、ひとりひとりに寄り添う姿勢を守るという点では、首尾一貫、非常に徹底している。

YRFSのシステム構築にあたっても、この姿勢は貫かれた。現在のGPSデータロガーは高性能化しており、さまざまなデータを収集することが可能だ。レースなどではそれらのデータのほとんどすべてを駆使しながら、ラップタイムを削るために活用する。

だがYRFSは、安全なライディングのために役立たせるものだ。どのようなコース設定をして、GPSデータロガーは高性能化データロガーからデータを抽出し、どのように可視化すればより分かりやすいか。その検討と実現には長い時間を費やした。

結果として、コースは楕円またはひょうたん型で、提示されるデータも加減速Gと横Gを簡略化したものに絞られている。また、画像からコーナリング姿勢を検出する仕組みも導入されているが、バンク角の深さを判断するようなスポーティなものではなく、ライダーが正しい位置で正しい乗車姿勢となっているかを客観的に示している。

シンプルといえば、シンプル。だが、このシンプルさにこそ、「Y RA大人のバイクレッスン」に懸けるヤマハの思いが込められている。

加速Gは、交通の流れにスムーズに乗れるだけのスロットルワークができているかを示す。スロットルを開けることにためらいがあると、流れに乗れずかえって怖い思いをするのだ。減速Gは、狙い通りにしっかりとブレーキングができているかが分かる。減速は安全なライディングの入口だ。

横Gで分かるのは、スムーズにコーナリングできているかどうか。速く曲がることが目的ではなく、安定して一定速で旋回できることが狙いだ。そしてコーナリング姿勢の画像からは、目線の送り方や上体に力が入りすぎていないかなどが分かる。すべて、実際に公道を走る時に確実に身に付けておくべき基本中の基本なのだ。

YRFSというシステムのポテンシャルには、大きな可能性がある。GPSデータロガーから集積されるデータと、ヤマハの車両メーカーとしての知見を組み合わせれば、よりハイレベルな使い方はいくらでもできるだろう。

だが、あえてそうせず、公道を安全に楽しく走るという「YRA大人のバイクレッスン」を守り抜く。「少しでも事故を減らして、ライダーにく楽しくバイクに乗り続けてもらいたい」というヤマハの思いが伝わってくる。

教習所でバイクの乗り方を教わっても、いざ公道という実践の場に出るのは不安――そんなライダーを優しくサポートするのが、YRA大人のバイクレッスンの役割。「このバイクレッスンは、より多くのライダーに受講して頂きたいという理由で、リピーターが極めて少ない」というスタッフの言葉が象徴的だ。レッスンの後に送付されるYRFSフィードバックシートは、通知表であり、卒業証書でもあるのだ。

今回お話を聞いた方

ヤマハ発動機(株)
先進システム開発部
品川晃徳さん
YRFSのシステムを開発。ヤマハ発動機がもともと持っていたライディングに関する多くの知見を生かし、ライディングに自信のないライダーに役立つよう、直感的に分かりやすいグラフを作り上げた。

ヤマハ発動機(株)
CX事業部企画戦略部
安間仁保さん
YRAの取りまとめ役として、レッスン内容に磨きをかける日々。レッスンを通じて受講者の声を収集し、新規アイデアを練っている。

ヤマハ発動機販売(株)
ヤマハ安全普及推進本部
宮本義信さん
いかにしてライダーに安全な公道走行を楽しんでもらうか──。ヤマハ発動機販売では、ただバイクを売るだけではなく、YRAを始めとしたレッスンを行い、安全に乗るためのサポートに力を注いでいる。

YRAとは?

「YRA大人のバイクレッスン」は、教習所を卒業して免許を取得したが公道デビューには不安があるビギナーや、久しぶりのバイクで技量が心配なリターンライダーを対象にしたもの。発進、停止から始まる基礎の基礎を親切ていねいに教えてくれるなど、スキルアップを図る一般的なスクールとは一線を画す。

ニーズに応じてレッスンコース、レッスン&ツーリングコース、オフロードレッスンを用意。各コースとも車両はレンタル。

YRFSとは?

GPSデータロガーを使用し、加減速Gや横Gなど受講者の走行データを取得。フォームも含め、レッスン前後で何がどう変化したかが分かるシステムだ。受講者には、インストラクターのコメントも添えたフィードバックシートが後日送付される。可視化された自分の成長度合いで、安全運転の励みにしてもらう狙いだ。

インストラクターの観察とアドバイス
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走行技量の測定
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見える形で残すことで継続的な成長を促す

新たに導入されるYRFSは、すでに練り込まれた「YRA大人のバイクレッスン」の定評あるていねいなレクチャー内容には影響を及ぼさないよう、最大限に配慮されている。

乗車姿勢画像の自動抽出

ライダー運動の影響が大きい旋回時は、乗車姿勢画像を用い、データやコメントの理解に活用する。コーナーにカメラを固定設置し、動画を撮影した。当初は、手動での画像抽出お行っていた。作業の効率化・均一化のため、画像の背景差分を用いた画像処理技能お用い、画像抽出を自動化するソフトウェアを開発した。

YRFSは、設定されたコースを走行中に動画を撮影し、旋回頂点付近での画像を自動抽出、ライディングフォームを分析するシステムも導入。コーナリング中、受講者が進みたい方向へ正しく目線を送り、バイクの動きを妨げない正しいフォームを取れているかが分かる仕組みだ。これもレッスン前とレッスン後で比較できる。

YRFSフィートバックの見方

YRFSのサンプルデータ。レッスン前は加減速にメリハリがなく、コーナリングも不安定だ。レッスン後は直線区間でしっかりと加速・減速を行い、コーナー区間では安定した横Gが発生している。フォームの違いも顕著だ。

ヤマハ大人のバイクレッスン スケジュール

6/5(土) 愛知:スラムパーク瀬戸(オフロード)
6/6(日) 愛知:スラムパーク瀬戸(オフロード)
6/12(土) 京都:京都府安全協会 自動車練習場(※)
6/13(日) 兵庫:ネスタリゾート神戸 第3駐車場(※)
6/19(土) 千葉:清水公園 第5駐車場
6/20(日) 千葉:清水公園 第5駐車場
9/11(土) 千葉:清水公園 第5駐車場
9/12(日) 千葉:清水公園 第5駐車場
10/9(土) 東京:東京サマーランド
10/10(日) 東京:東京サマーランド
10/24(日) 京都:山城田辺自動車学校

今後のコロナウイルス感染拡大状況によっては、一部中止の場合あり
(※)印はYRFS利用レッスン

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