1. HOME
  2. イベント
  3. ヒストリー
  4. 【Thinking Time】㊳回を重ねるごとに切れ味鋭く!リアルにオープンな会議体へ

【Thinking Time】㊳回を重ねるごとに切れ味鋭く!リアルにオープンな会議体へ

*BikeJIN vol.245(2023年8月号)より抜粋

自工会とメディアによる二輪車委員会メディアミーティングも6回目を迎えた
日髙祥博委員長のもと回を重ねるごとに本音が飛び交う会議体はこれまでにないものだ
今回はマナーと安全運転に始まり、すり抜け、高速料金問題と議論が白熱していった

自動車会館の会議室を出て初のバイパラ開催となった

二輪車委員会によるメディアミーティングは東京・大門にある日本自動車会館の一室で行われていたが、今回は初めての遠方開催となった。開催地は、湯河原峠に位置し伊豆・箱根ツーリングで多くのライダーが行き交うバイカーズパラダイス南箱根。参加者も「なるべくバイクで」という案内だった。

5月25日(木)、「第6回 自工会二輪車委員会メディアミーティングin箱根」が開催された。案内状を頂いた時は「えっ箱根!?」と面食らったのだが、参加者同士がいちライダーとしての意見を忌憚なく交わせ、良い内容となっていたので紹介したい。二輪業界の難しい話、ネガティブな話をする時にこそ、いちライダーに立ち返って考えてみることは重要な視点だと再認識できた。この場を借りて御礼申し上げたい。

伊豆スカを「事故ゼロ」にカズ中西さんの想いとは

 さて、今回のテーマは「伊豆スカイラインにおけるライダーのマナーの現状を一例に、『バイクを楽しむためのライダーのマナーと安全啓発』というもの。箱根と伊豆は隣接エリアであり、東海・首都圏ライダーにとってはまさに庭のような場所。椿ラインのようなタイトなワインディングや伊豆スカイラインのように絶景を楽しみながら走れる観光道路がいくつもひしめきあっている。80〜90年代のバイクブームの頃から〝朝練〞と称して走りこむライダーもいるし、観光道路をのんびり楽しむライダーもいる。ファン領域のあらゆるライダーがこのエリアに集まっていると言っていいだろう。 こういうエリアに付いて回る問題のひとつが、バイク事故だ。目を三角にしてコーナー(カーブとは言わない)を攻めている自分に酔っている姿は、実は周りの人からすると「嫌〜な人」に見えているかもしれませんよくらいのことは考えるべきだろう。

80年代に朝練をやっていた世代もいまや50〜60代。会社員にしろ自営業にしろ社会的な地位や責任、さらには愛すべき家族がいたりするわけで…。まぁ、だからこそのストレス発散!「他人に迷惑かけなきゃいいだろう」という人も少数ながら一定数はいるわけだ。

 伊豆半島の修善寺に移住したカズ中西さんは、こうしたライダーが伊豆スカイラインで事故を起こして大けがを負ったり、亡くなったりしているのを見てきた。1997年、教習所で大型二輪免許が取得できるようになり、2003年頃から伊豆スカイラインではライダーによる重傷・死亡事故が相次ぐようになった。伊豆スカイライン全体での人身事故での二輪事故構成値は80%を超えるようになり、まさに異常値、異常事態となってしまった。

 地域の4つの警察署では「伊豆スカイラインを二輪車通行禁止にすべきでは?」という声が挙がったが、カズさんは「それでは事故は減らない」とメディアにも協力をお願いしフォーラムを開催して改善案を模索した。

 そうして2009年11月から始まったのが「伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦だ。「地元に二輪車通行禁止の道を作らない」をテーマに掲げ、通行禁止や遮断ではなく利用者であるライダーの意識に訴え、違反をゼロにするのではなく「事故をゼロにする」ことを目標としたのだ。

「事故らないように走ろうよ。無事に家に帰ろうよ。道路はみんなが利用している」

カズさんらは、地域の大仁警察署や白バイ隊員OBらとともに伊豆スカイラインを訪れるライダーに声掛けやビラ配りなどを行いながら5年間ほど事故ゼロ作戦を展開し、現在は県警本部による「IZUセーフティドライブ作戦」の中で、二輪車事故防止を目的に8年目の活動を迎えている。この中では、これくらいの速度で走れば楽しいのでは? と交通機動隊と一緒に伊豆スカイラインを走ることで来訪者に走行イメージをつかんでもらうペースメーク活動を行っている。

 なお、カズさんは4年前に40・50・60㎞/hと区間ごとにバラバラになっていた伊豆スカイラインの制限速度を50㎞/hに統一するように公安委員会に提議しこれが通った。これにより現在、伊豆スカイラインでは最高速度が全線50㎞/hに統一され、より運転に集中しやすくなっている。

 ちなみに、本誌でも紹介したことがあるが、こうした活動は熊本県の阿蘇地域でも「阿蘇ペースライダープロジェクト」と銘打って行われている手法で、阿蘇では3年間伝え続けて二輪車死亡事故がゼロになった(2022年)という実績もある。 最後に、Cから活動の根源を問われたカズさんはこう答えた。「地元にバイク通行禁止の道があるのは納得できない。昔のバイクブームの頃は、自分が亡くなると家族や友人が悲しむという観点がなかった。それは言ってあげたほうがいい。手弁当でも価値があると思って始めたんです」。 現在、伊豆スカイラインでの重傷・死亡事故は年に1件あるかないか。いい歳をした我々が若い人の見本となって然るべきだろう。

日髙委員長はYZF-R1Mで来場!

今回の開催地はライダーの聖地、箱根ということもあって、メディア関係者など参加者の多くがバイクで来場した。日髙祥博委員長(ヤマハ発動機社長)も愛車のヤマハ「YZF-R1M」で颯爽と来場。スタンダードではなく“M”というのがポイント!

日髙委員長はライディングフォームがキレイだった。普段から乗っているのが分かる
いちライダーとしてのコメントが聞けるのはメディアとしても嬉しい限りだ

カズ中西さんと「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

今回のゲストは、伊豆スカイラインでの事故ゼロを目指してライダーに向けた安全運転啓発活動を行うジャーナリスト、カズ中西さん。カズさんは当地でのバイク事故および、二輪車通行禁止の流れを危惧し、地域の警察と連携のうえ伊豆スカ事故ゼロ小隊を組織して「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」等を実施して事故防止を呼び掛けている

ライダーへの啓発活動は地域の大仁(おおひと)警察署等と連携して行われている
カズさんは1999年に伊豆・修善寺に移住し2009年から安全啓発活動を行っている

禁断の!? すり抜けトークで活路を見いだせ!

マナー問題で必ずと言っていいほど話題に上がるのが“すり抜け”。すり抜けの多くは道交法違反にあたることが多いが、通勤ラッシュ時や高速道路の渋滞時などにすり抜けをするライダーが多いことも事実。二輪業界にとっては“不都合な真実”だが、二輪車委員長という業界のトップを前にざっくばらんに意見交換。筆者も炎天下の高速道路渋滞時におけるライダーへの身体的危険性を訴えた

「『バイクなら行きなよ』という社会的な寛容性は成り立っていない」とカズさん
「言葉にすると語弊があるが安全なすり抜け、運転方法を教えてあげるべき」という意見も
自工会常務理事の江坂行弘さんは元国交省。「ドライバーにライダー独自の問題を理解してもらい、二輪車に優しい交通文化を作っていくのも大事」とコメント

ツーリングプランと定率割引は前年度踏襲… 高速料金問題へのアプローチを具体化する!

今回のテーマからは外れるが、4月1日から今年度分が始まっている「2023ツーリングプラン」と「2023二輪車定率割引」についても議論が交わされた。軽自動車との料金区分の分離を目的にし、バイクの通行料金としては軽自動車の5/8、普通車の半額という料金設定を目指しているが、今年度は昨年度と同じ内容で、まさしく前年度踏襲となってしまっている。ユーザーニーズの可視化や利用件数などで目標値を設定しては? という意見が出た

オートバイ誌・松下尚司編集長は「国交省に持っていく利用者数の目標値を掲げて、我々メディアも協力して進めていくべき」と提言した

データと数字を示していくことで説得力のある交渉と施策を

松下編集長の提言を受け、「データをきちっと作って、ネクスコに『売上は変わりませんよね? これ以上なら逆に儲かりますよね?』と外堀を埋めていくようなやり方で。目標値・しきい値を明確にして進めればキャンペーンもより楽しくなるのでは?」と委員長。

関連記事