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  4. ヤマハのコト創り:VOL.7 ヤマハ・コミュニケーションプラザ

いつでもルーツを遡ることができる。現在を感じ、未来に思いを馳せる
ヤマハ・コミュニケーションプラザは、時間軸を超えたヤマハのモノ造りの魂を
存分に感じられる施設だ。展示物や企画イベントは間違いなく「コト」
だが、根底にあるのは製造者として決して変わることのない「モノ」への思いだ

なぜコミュニケーションプラザ?

考えてみると、ちょっと不思議な名前だ。

静岡県磐田市。ヤマハ発動機本社敷地内にあるヤマハ・コミュニケーションプラザは、ピストンを模した円筒形のデザインが目を引く。中には、多数のバイクを中心として、同社の製品が幅広く展示されている。

○○博物館とか××ミュージアム、といった名称なら、まさに名は体を表すといった感じで分かりやすい。だが、「コミュニケーションプラザ」である。誰が、何を、どうコミュニケーションしようとしているのだろうか?

「コミュニケーションプラザの設立は98年です。ヤマハ発動機創業40周年記念事業の一環でした。 そして疑問に思われている名称ですが……。ちょっと説明が必要かもしれませんね」

そう話してくれたのは、コミュニケーションプラザの取りまとめ役を務めている松尾現人さんだ。

ヤマハ発動機 企画・財務本部
コーポレートコミュニケーション部
インターナル・コミュニケーショングループ
コミュニケーションプラザ担当
主査 松尾現人さん
営業、パス事業、宣伝業務、海外駐在などを経てコミュニケーションプラザの取りまとめ役に。「他愛もない話からアイデアが生まれる。会話は大事です」

松尾さんによると、コミュニケーションプラザはもともと主には社内向けの施設として作られたものだった。

当時作られたパンフレットの冒頭にはこう書かれている。

「ヤマハ発動機グループの社員が、当社の企業理念や長期ビジョン、そして過去・現在・未来を語り合う『場』として、その内容と活動の充実を図るために、全員が積極的に参画し、成長・発展させていくコミュニケーション施設」

松尾さんが説明してくれた。
「ここには、ヤマハの第1号であるYA‐1を始め、過去に作った製品が展示してあります。そしてもちろん、現在の製品もある。未来につながる技術のタネを企画展示することもあります。 私たちヤマハは、原則的にモノ造りの会社です。自分たちが造ったモノを実際に見ることができるというのは、想像以上に大切なことなんです」

一般的にモノ造りの現場は、効率のよい開発のために、専門化、細分化、分業化、そして電子化がどんどん進んでいる。それだけに、自分が造っているモノがいったい何なのか実感を持って理解することが難しくなりつつあるのだ。

「コミュニケーションプラザでは、実際のモノを眺めながら、社員たちが語り合うことができるんですよ。図面だけでは分からないことが分かったり、思わぬアイデアが浮かんできたりと、メリットはたくさんあるんです」

コミュニケーションプラザに展示されているのはバイクだけではない。船外機を始めとした、ヤマハの多彩な製品が一堂に会する。ほとんどの製品が「動くモノ」だ。

だからこそ、実体があることが重要なのだと松尾さんは言う。

「社名からして『発動機』ですからね(笑)。時代は変わっても、モノを動かす力を生み出す会社であることには変わりないんです」

コミュニケーションプラザのバックヤードでは、過去に造られたバイクのレストアが行われている。量産車からレーサーまで、ほとんどすべてが実際に走る状態で動態保存されている。

「動かなくちゃ意味がありませんからね」と松尾さん。中には2ストエンジンを搭載したレーサーのように、将来的に復活する見込みが薄いものもある。それでもしっかり走れるコンディションが維持されているのだ。

「古の技術になったのは確かですが、2ストマシンの構造や動作を、知識として、実体験として覚えてもらうことには、重要な意味があると考えています」と語るのは、コミュニケーションプラザの企画運営に携わる畑﨑隆行さんだ。

ヤマハ発動機 企画・財務本部
コーポレートコミュニケーション部
インターナル・コミュニケーショングループ
コミュニケーションプラザ
畑﨑隆行さん
関東各地の営業拠点でサービスマンを務め、本社でのお客さま相談室を経て、現在はコミュニケーションプラザの展示・企画・運営を手がけているベテラン

レストアを手がけたくてコミュニケーションプラザの仕事に手を挙げたと言う畑﨑さん。レストア業務には、ただ「昔の製品をよいコンディションで保存する」こと以上の意義を感じている。

ヤマハ第1号車YA-1や、往年の、そして最新のレーシングマシンが並ぶ館内。時が流れても、モノ造りの本質に変わらない核があることを、静かに伝えてくれる

ヤマハ第1号車YA-1の2スト125ccエンジンのカットモデルや、多岐にわたるエンジンのピストンが勢揃い。「動くモノを造るメーカー」であるからには、その心臓部を重視するという姿勢

もともとは社内向け館外モニュメントもモノ造りを意識
館外モニュメントにある「居安思危」は、ヤマハ創業者の川上源一がノートに記していた言葉。「安きに居りて危うきを思う」は、「備えあれば憂い無し」の前段にあたる、モノ造りの教訓だ。スパイラルなデザインは未来の発展と総合力を表現

DATA

ヤマハ・コミュニケーションプラザ
ヤマハ発動機本社敷地内にある企業ミュージアム。正面左手の円筒形はシリンダーを模していて、小型エンジン技術をベースにしたヤマハの起源を象徴している。見学は自由だ
住所:静岡県磐田市新貝2500
TEL:0538-33-2520
営業時間・定休日:WEBサイト参照
入館料:なし
HP:https://global.yamaha-motor.com/jp/showroom/cp/

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