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【Thinking Time】㊻今、初心者向けレッスンが大好評! 楽しく学んでバイク事故減少へ

前年度のバイク事故増に対して二輪業界団体・メーカーが
初心者向けのライディングレッスンを強化している
免許取り立てやブランクの長いライダーが公道を安心して走るためには
なにが必要なのかを考察する

BikeJIN2024年7月号 Vol.257掲載

コロナ禍明けの昨年、二輪車死亡事故が急増したことについて前回お伝えした。特に20代前半の若年層と60代前半のリターン層では約7割もの増加となり、二輪団体やメーカー・販売会社、関係各所が研究分析を踏まえた対策に乗り出している。ユーザー像に焦点を当てつつ、対策手法とその課題について考察する。

バイク事故急増で重要性が増す初心者向けライディングレッスン
昨年、バイク死亡事故が急増したことを前号でお伝えした。自動二輪で14%、原付で27.2%もの増加となり、二輪業界や警察ほか関係各所は啓発や講習会の実施など安全運転施策に力を入れている。20〜24歳と60〜64歳では約7割も増加したため初心者およびリターンライダーに向けた施策が重視されている。
「行動類型別発生件数」の衝撃直進時で多発!
都内二輪車事故を行動類型別に見ると約7割が直進中(4335 件・うち死者36人)に発生。右折時(338件・うち死者3名)、発進時(171件・死者1名)、左折時(168件・うち死者なし)と続く。直進時事故の要因は速度超過やわき見運転
「事故類型別発生状況」に見る傾向出会い頭・右直・追突が多い
都内二輪車事故を類型別にまとめると、出会頭、追突、車両単独、右直(グラフ内の“右折時”)、追突の順となっている。そのうち死者数が最も多いのは右直事故で12名が亡くなっている。四輪との右直事故の場合、そのほとんどで二輪車は直進側となる

バイク仲間の少ない若年層増加が見込まれるシニア層

コロナ禍では免許取得者数、バイク販売台数ともに増加し、ライフスタイル重視の第12世代バイクブームと呼ばれる現象も起きた。首都圏など三ない運動が収束した地域では高校年代からの免許取得とバイク所有が増え、バイクの受容性はより高められているが、若年層の事故増加については、その課題が浮き彫りになった。

ここ数年で増えているバイク関連イベントやライディングスクールという場で若年層に話を聞くと、バイクライフの不安や悩みについては共通点があることが分かる。バイクに乗る友人や仲間がいない、親がバイクに乗っている(いた)、バイクに対する嫌悪感や抵抗感はなくマンガやアニメの影響が大きい、こういったものだ。もちろん、こうした若年層はユーザー全体から見ればごく少数だ。なので、彼らが抱える課題への改善施策というものは大きなものにはなってこなかった。しかしこれだけ事故が増えたとあっては、具体的な対策をせねばならない。

同様に、60代のユーザー層についても対策が求められている。現在コア層となっている50代半ばのユーザーがこのままバイクに乗り続ければ、今後は大きく増える年代だ。定年後の趣味としても注目されているバイクの場合、数十年という長いブランクを経てリターンライダーとなる方も増えている。ライディングスクールでも「乗ったら意外と早く操作を思い出せた」という方もいれば、クラッチ操作についてまったく覚えていなかったという方もいる。運転操作が平均的な20代とは違い、ユーザーレベルの振れ幅がとても大きい年代なのだ。

こうした状況のなか初心者向けのライディングスクールが好評だ。日本二輪車普及安全協会が主導していたグッドライダーミーティングもベーシックライディングレッスンと名称変更し内容もリニューアルした。募集対象や講習内容も初心者向けとなっている。メーカー・販売会社が開催するスクールでも初心者・超初心者向け(クラッチ操作ができない等)のコースが増えている。レンタル車両を用意するスクールもあり、バイクをまだ購入していないユーザーでも参加できる。こうしたスクールが若年層の出会いの場となることも多く、今後はこうした場から始まるサポートコミュニティの構築も求められそうだ。

また、少しずつではあるが、バイク練習場も各地に増えてきた。自治体が所管するもの、民間が事業として運営するもの、無料・有料など様々だがユーザーが基礎的な運転技術を反復練習できる場としてのニーズを行政や民間事業者にさらに知ってもらいたいところだ。また、運転操作や法規走行について教えられる指導員も必要となるが、指導員不足は業界全体の大きな課題であり、二輪車安全運転推進委員会の指導員資格の他にも初心者向けインストラクターを養成できる仕組みづくりを検討すべきだろう。

低速時のバランス保持など基礎的な運転技術を向上し、その上で実践的な法規走行を教えていくことができればバイク事故を減らしていけるのではないだろうか。業界を挙げての施策強化と、そうすることの価値向上に期待したい。

経験と情報を共有できるコミュニティや気軽に利用できる練習場も求められる
教習所の二輪教習カリキュラムには路上教習がなく、免許取得後も公道未経験のままペーパーライダーになってしまう人も少なくない。特に若年層は周りにバイクに乗る友人や仲間がおらず、経験を共有しながら高めていくという場が少ない。安全運転推進・事故防止を目的としたコミュニティや場づくりのほか練習の機会・場所が求められている

グッドライダーミーティングがリニューアル!ベーシックライディングレッスンが開催中

グッドライダーミーティングをより初心者向けの内容とした講習会がベーシックライディングレッスンだ。日本二輪車普及安全協会と警察・交通安全協会により全国各地で開催されている。写真の様子は4月14日に開催された関東ブロック・東京会場のもの。講習内容や時間、料金などは地区・会場により異なる
者全員で指導員・白バイ隊員によるブレーキングのデモンストレーションを見学した。左からリアのみ、フロントのみ、リア+フロントを使用した場合の制動距離の違いを確認
ブレーキング
パイロンからの全制動(練習)、パイロンへの目標制動(体験)、指導員がブレーキタイミングを指示する旗振り制動(体験)を実施
法規走行
一本橋、波状路、Uターンなど二輪コースを活用して低速バランスを練習。課題をつなぐ区間では進路変更など法規走行を徹底した
グループは初心者と超初心者に分けられたので他の参加者への気遣いは無用。急ぐ必要もない。指導員の数も多いのでアドバイスもしっかり受けられた
一時停止、発進時の左右後方確認が徹底された。初心者は停止・発進時にバランス保持に気を取られがちだが、事故に遭わないためには確実な確認が必要
講評では「一番大事なのは乗車姿勢」ということが伝えられた。ニーグリップによる車体との一体感がないと上半身とハンドルを自由に動かせないからだ

メーカー販売会社が取り組む初心者向けのライディングレッスン

カワサキ
「カワサキプラザ Safety Riding Sc
hool」は全国のカワサキプラザが主催する初心者・リターン向けのスクールで地域ごとに特色がある

スズキ
「U30スズキセイフティスクール」は30歳以下の基本操作を学びたい初心者が対象。レンタル車両があり、座学をしっかり行うのも特徴だ

ヤマハ
「YRA(ヤマハライディングアカデミー)」には公道ツーリングも含めたレンタル車両によるレッスン、車両持込レッスンなど豊富なメニューが揃う

ホンダ
「HondaGO BIKE LESSON」では車両をレンタルでき、公道走行ができる会場もあり、公道が不安という方にもお勧め。マスツーリングのノウハウも伝授

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