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ハーレー和尚のバイク説法「除夜の鐘(じょやのかね)」

バイク寺として親しまれる大阪府能勢町にある「妙見宗総本山 本瀧寺」の執事長。40歳の時に大型二輪免許を取得。ショベルに乗るハーレー和尚として、バイク講話など交通安全普及に努める

 本瀧寺のシュウケンです。早いもので今年もあとひと月ばかり。毎年この時期になると、時間だけがあっという間に過ぎ、気がつけば大晦日。そのまま除夜の鐘を聞いて年を越した、なんて経験した人も多いことでしょう。

 ご存知の通り、『除夜の鐘』は、大晦日の深夜(0時)を挟んで撞く梵鐘のことです。梵鐘とはお寺などで仏具として使われる釣鐘で、多くの寺では梵鐘を百八回撞きます。諸説ありますが、この百八という数字は人が持つ煩悩の数とされています。一つ鳴るごとに煩悩を一つ祓い、百八回、すべての煩悩を祓い去って、新しい年を迎えるという意味が込められています。

じつは本瀧寺にも梵鐘はあったものの、多くの寺院と同様で戦時中の金属回収令で回収されたとか

 “祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり”。平家物語で有名なこの冒頭部分など、梵鐘に対してなにか神聖なものに感じるかも知れませんが、本当はお寺の鐘は私たちの生活にとても身近なものだったのです。最近はご近所への騒音の配慮や撞き手不足などが理由で、梵鐘を撞く寺が減っていると聞きますが、大晦日だけでなく、本来毎日梵鐘撞いています。畑仕事などなにか作業に集中されている人たちは、この鐘の音を聞き、時を知りました。余談ですが、先ほどの平家物語に出てくる祇園精舎。“祇園”という文字から京都のお寺と勘違いされている人も多いかと思いますが、じつは古代インドにあった寺院のことです。さらに言うと梵鐘自体はインドから中国に仏教が伝来されて普及する過程でできたものとされています。つまり祇園精舎には梵鐘はなかったと言われています。

 当寺で授与させていただいている守護鈴。交通安全のお守りとしてバイクに付けていただいていますが、運転中、周囲に音が溢れている状況でも、不思議なことにヘルメット越しに鈴の音が聞こえてくるそうです。バイクに乗っている時、誰しも運転に集中していると思います。その時、ライダーの意識は視覚から入ってくる様々な情報に占められているのではないでしょうか。その視覚に意識が集中している状態の時に、ふと耳に入る鈴の音は心に余裕を生み、安全運転の意識を思い出させてくれます。

本瀧寺で授与される守護鈴。アメリカのガーディアンベルを連想させるお守りで、交通安全のご利益に授かれるのもさることながら、運転中にふとっと聞こえる鈴の音に安全運転を意識する作用もある

 これから年末に向けて、バタバタと忙しくなるかと思います。そういう時に、人は気ばかり焦ってうっかりとしたミスを犯しがちです。たとえ自分が気を付けていても、周りのミスに巻き込まれることもあります。目の前のものに集中することも大事ですが、周囲の音や匂いなど、それらを感じられるくらい、心にゆとりを持つことも大切です。残りひと月、決して焦らず、いつもの平常心で安全運転を心がけてください。そして無事故無違反のまま除夜の鐘を楽しんでください。それではよいお年をお迎えください。

合掌

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