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【バイク日和】初めて見た女性白バイ隊員! その力強い姿に憧れて

大阪国際女子マラソンの先導や、全国白バイ安全運転競技大会第2位!
大阪府警本部の交通機動隊に所属する海堀安美巡査長は
その可愛らしい笑顔からは想像もできないスーパー女性白バイ隊員
普段知ることのできない白バイ隊の苦労や魅力などを聞いてみた

悲しい思いをする人を一人でも減らしたい

バイクに乗る仕事と聞かれると、白バイ隊を思い浮かべる人が多いと思う。マラソン大会などで選手たちを先導し、国の要人を警衛警護。また時には毅然とした態度で交通違反を取り締まる姿などに、憧れを抱くライダーは決して少なくないはず。

今回紹介する海堀安美さんは、大阪府警本部交通部交通機動隊に所属する白バイ隊員だ。現在(7月末取材時)、114名の白バイ隊員がいる大阪府警の中で、わずか7名の女性白バイ隊員の一人である。「高校2年生の夏、和歌山市内に出かけた時に初めて白バイを見たんです。で、かっこいいと感じて『私も白バイに乗りたい』と思うのと同時にバイクに興味を持ちました」と語る海堀さん。それまでテレビでしか見たことがなかった白バイ隊員。しかもその時の白バイは女性隊員。その力強い姿に憧れ、『自分も誰かにとってそんな存在になりたい』。その想いが、白バイ隊員を目指したきっかけだと語る。

体格など男性と比べてハンディを感じる時もあるという海堀さん。それでも「親しみやすい雰囲気」と声をかけてもらえるなど女性隊員ならではのメリットと喜びを語る

海堀さんの場合は高校卒業後、1年間警察官を目指して専門学校に通い、その後大阪府警察に合格。10カ月の警察学校での勉強を終えて、卒業後すぐに警察官として3年ほど現場(交番)勤務を経験。白バイ隊員になるには配属先を希望して、そこから3回の試験に合格しなければならない。1回目は面接と論文。それに合格すると2回目の試験に進むことができる。ここで初めてバイクに乗り、約1カ月の訓練を行って最終日に試験を受ける。合格するとさらに1カ所なども選定して止まるようにしなさい。バイクが動いている時もそうだけど、動いていない時ほど特に注意! って言われました」 そして3度の試験に合格して、23歳でついに憧れの白バイ隊員に。初めて生で見た高2の夏から6年ほど経った時のことである。

白バイを扱う時には細心の注意&集中力が必要で、勤務が終わる頃にはヘトヘトに疲れることも。これから白バイ隊員を目指す人は「日々の体力の錬成が大切」とか

定期点検はもちろん日々の乗車前には必ずライト&パトランプ、空気圧やパンクなどの異常箇所がないかをチェック。これは一般ライダーも同様だ

白バイ隊員としての業務には、交通指導取り締まりや、要人の警衛警護に加え、二輪車講習をはじめとする交通安全教育や広報活動などがある。女性隊員の場合は、広報活動の割合も多く、イベント時にはスラロームや急旋回のドリル走行というデモ走行など多岐にわたる。テレビ中継などでよく見るマラソン大会の先導も大切な業務の一つだ。海堀さんもこれまで2度、大阪国際女子マラソンの先導を行っている。「沿道の声援がすごくて、初めての時はとても緊張したことを覚えています(笑)。選手のペースに合わせて、ゆっくり走るんですが、それが普段と違って難しいです。前はもちろんミラーで(後方の)選手を確認しながら、隣の(白バイ隊員)人とあわせて走らなければいけません。選手がペースを上げた時とか『追いついてきているよ』なんて声を掛け合っています。本番前には(練習)コースで後輩にランナーとして走ってもらって、練習をしたりしました」。 また、海堀さんの場合は、通常業務とは別に全国白バイ安全運転競技大会にも出場。全国白バイ安全運転競技大会とは全国から選りすぐられた白バイ隊員が集まり、年に一度茨城県の安全運転中央研修所で安全運転技術を競う大会のこと。その2021年に行われた第51回大会で、当時公開競技であった『バランス走行操縦競技』女性の部でなんと第2位に入賞している。

8の字走行やナロー(一本橋)コース、回避制動という白バイ運転で最も大切なバランス技術を競うバランス走行操縦競技。白バイ特練係での特訓の成果を発揮して2位入賞。この経験を活かして養成部署での後進育成が今後の目標だとか

これら白バイ隊員として、さまざまな経験をしてきた海堀さんの最終目標は二つ。一つは全国白バイ安全運転競技大会出場の経験を活かして、白バイ隊員を目指す人の力になること。そして、もう一つが交通事故を減らすこと。昨年、府下で141人の方が交通事故で亡くなられ、1948年の統計以来、初めて全国ワーストワンとなった大阪府。バイクに関しても、39人の大切な命が失われている。その事故原因の大半が交通違反によるもの。言い換えれば、交通違反さえ無くなれば、多くの命が救われることになる。そのため大阪府警では”遅刻する!”の速度超過、”もう信号変わるし、行ったれ!”の信号無視、”前の車、邪魔やどけよ!”の車間距離不保持など、重大事故の原因となる『いらち運転』の取り締まりに重点を置いている。これに加え、バイクに関してはすり抜け、割り込みがここ数年問題視され、取り締まりの強化に当たっている。「憧れもありますが、事故で悲しい思いをする人を一人でも減らしたい。やはりその想いが、白バイ隊員を目指し続けた一番の理由だと思うんです。そのためにも危険な運転をするドライバーやライダーをどんどん取り締まっていきます」。

そんな海堀さんは現在、意外にもプライベートではバイクには乗っていないそうだ。「今は(バイクに乗るのは)仕事で一杯一杯ですが、いつか白バイの仕事を離れたら、プライベートでもバイクに乗りたいと思っています。のんびりとツーリングなんかにも行きたいですね。その時はもちろん安全運転で!」。

白バイ&隊員をチェック!

現在、白バイに採用される車種は現行モデルではホンダのCB1300Pのみ。“P”はポリス仕様。サイレンやパトランプ、無線などが追加装備されているが、エンジンなどの基本性能は他の市販モデルと一緒。交通機動隊では1隊員に対して1台が基本で、隊員同士で共有などはしないそうだ

後部ボックスの中には、レインウェアや誘導灯、地図のほか、夏場などには水分補給用の飲み物も入っているそうだ。またイベント時などには展示スタンド用の板も収納する

万が一の転倒時に備え、エンジンガードなどのプロテクターを装備

左ハンドル部には無線用のスイッチを装備。

右ハンドル部にはマイク、サイレン、パトランプなどスイッチがある。ちなみにPはパトランプの点火&回転、Mはメーターストップ、Sはサイレン。

メーター回りは通常のバイクと同様の表示のほか、白バイならではの測定速度の表示

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