ハーレー和尚のバイク説法「安居」(あんご)
今月の一言
本瀧寺のシュウケンです。GWはツーリングなど、バイクライフを満喫された方も多かったかと思います。
でも、楽しいGWが終わり、この本が発売される6月に待っているのが、梅雨。 そう、一年の中でも、ライダーの皆さんをもっとも憂鬱にさせる時期です。
仏教の用語に『安居』(あんご)という言葉があります。安居とは僧侶たちが一定期間、ひとつの場所に集まって修行をすること、またはその期間を指します。もともとはサンスクリット語で雨季を意味する言葉です。
日本の梅雨とは違い、インドの雨季は春から夏にかけて数カ月も続きます。雨季の時期は外出が不便です。また、この時期には草木が多く生え茂り、虫などの多くの小動物が活動します。
不要な外出で草木の若芽や小さな虫を踏み潰すような、無用な殺生を防ぐために始まったと言われています。
私が修行をした比叡山でも、毎年7月中旬に安居が行われます。葛川という御堂に一週間ほど集まって修行に専念します。
インドの雨季とは違い日本のこの時期に外出しても無用な殺生をすることはほとんどありません。それに僧侶の修行は安居に限らず、毎日行っています。
それでも安居を行うのは、悟りを求めるためはもちろん、それまでの修行や規律、なにより自分自身を見直すためだと私は考えています。
バイクを安全に乗るためには整備、ツーリングに出かけるには計画や準備が必要です。
恐らくほとんどの読者の皆さんは、普段から整備やツーリング前の準備などはしっかりと行っていると思います。
でも、それらの整備や準備などが、どこかルーティン化していないでしょうか。
安居ではないですが、梅雨の時期だからこそ、普段ではできない整備や、梅雨明け後のツーリング計画などをじっくりと立ててみてはどうでしょうか。
じっくりとバイクと向き合って整備や計画を立てることで、なにか新しい発見があるかもしれません。“雨だからバイクに乗れない”。そう考えると梅雨は憂鬱な時期です。
しかし、整備やツーリングの準備や計画、さらには友人たちとのバイク談義など、普段とは違う過ごし方をすれば梅雨も満更ではないと思います。
それらを含めてすべてをバイクライフと言います。
なにより雨のなか、無理してツーリングなどに出かけて事故を起こせば大変です。
事故で怪我をしたり、亡くなったりするのは自分に対する殺傷、殺生なのです。
合掌
BikeJIN2022年7月号(Vol.233)掲載