ツーリングを楽しむ全てのバイク乗りのためのWebメディア

BikeJIN

【Thinking Time】~バイクの今を読み解く~
⑤駐車場不足と取締りが街からバイクを排除した

*BikeJIN vol.215(2021年1月号)より抜粋

2006年、駐車場法の改正により自動二輪車は駐車場に停めることが義務付けられた
同時に、放置駐車車両確認事務の民間委託が始まり、原付一種を含めて街中のバイクが厳しい取締りを受ける状況となった。
そのような事態に至った要因を含めて、本記事では2000年代初頭からの振り返りをしよう。

2006年の2つの法改正

そもそも街中にバイクが停められなくなったのは2006年6月に施行された改正道路交通法により、放置駐車車両確認事務の民間委託が始まったこと。これにより、いわゆる〝緑のおじさん〞と呼ばれる駐車監視員が、片っ端から放置車両確認標章を貼りつけていった。法改正により警察に出頭しなくてもよくなり、違反点数も加算されなくなったが、車両の所有者は放置違反金を納めなければならない。原付バイクでも放置駐車違反で9000円〜(駐停車違反なら6000円〜)と高額であり、数回くらうと、もうバイクで移動しようとは思わない。そういうレベルの衝撃だった。
 

続いて、2006年11月から施行された駐車場法の改正で50㏄超の自動二輪車も駐車場法に組み込まれる(それまでは除外されていた)ことになり、バイクを停める時は駐車場に入れなければいけなくなった。50㏄以下の原付一種は、自転車法により自転車等駐車場に停めることが規定されていたため、駅前の駐輪場に停めることもできたが、自動二輪車は目的地で停められなくなった。おかげで、翌年には約52万台というとんでもない数のバイクが放置駐車違反の取締りを受けた。

二輪車(原付+自動二輪)の違法駐車取締り件数の推移(全国)
出展:日本自動車工業会「二輪車を取り巻く環境」(2015年2月3日)による図表を参考に作成
日常の移動手段として利用率が減少2006年の駐車場法改正と放置駐車車両確認事務の民間委託により、バイクの違法駐車取締り件数は目に見えて急増。翌年をピークに右肩下がりで減っているがなぜか? 警察の取締りが緩んだ? それを加味したとしても都市部への乗り入れが減ったのが一番大きな理由だろう。停めるところがないからバイクで出かける人が減っただけのことだ。乗らないどころか、バイクを手放してしまう人も続出した

ストリートバイクブームが 要因の一つ

この2つの法改正がバイクを街中から排除したわけだ。では、なぜそんなことになってしまったのか? 取締り件数のグラフにもあるように2000年から徐々に増えたのは、ストリートバイクブームの影響が大きい。ビッグスクーター等に彼女を乗せて繁華街に繰り出すというスタイルが若者たちのステータスでもあった。カリスマ美容師やセレクトショップの店員がバイク雑誌に出ていた時代だ。

結果、車道や歩道はそれまで以上にバイクで溢れた。そうしたブームの悪い一面が各地に広がり、都市部の問題となっていたのは事実だった。バイクが街中に停められなくなった直接的な要因である2つの法改正と、それに至った要因について簡単に説明した。我々、ライダーにも反省すべき点は多いと言わざるを得ない。

ストリートバイクブームは、渋谷を中心に巻き起こり各地に波及。街中にあふれたバイクは通行の邪魔になり問題化した

ただし、納得いかない点はもちろんある。バイク駐車場に停めなければいけなくなったのに、バイク駐車場がないのだ。二輪業界としては、法改正が成される数年前から、政治的な活動を含め、こうした結末を避けるためにあらゆる努力をしていた。
 その辺りの話は次回説明するが、法改正後は「駐車場を作ってくれ、増やしてくれ」という要望や陳情が各所で行われ、バイク駐車場の台数は現在に至るまで右肩上がりで増え続けている。しかし、街中を走ってみれば、「どこにあるのか分からない」「駅前や繁華街、商業施設など欲しい所にない」「あったと思ったら満車」といった具合で、自動車と比べると足りていない。

バイクの駐車場は確かに増えたが、移動手段としてのニーズを維持できなかった
2006年、駐車場法の改正が行われた。直後から自治体や商業施設、駐車場事業者もバイク駐車場の設置に取り組み右肩上がりで増え続けた。しかし、それ以前は50㏄超の自動二輪車に駐車場が必要なかったわけで、そうした頑張りがニーズに追いつかず、移動手段としてのバイク は急速に価値を落とし販売台数は減少した

売れなくなった原付一種

特に、街中の手軽な移動手段として使えなくなった原付一種スクーターはモビリティとしての価値を失い、販売台数も右肩下がりであり、2020年排出ガス規制(継続生産車への適用が2025年11月)を前に、今や風前の灯火となった。
 
90年代後半から始まったバイクのムーブメントが、それまでの利用環境を一変させた。そして、コミューター(街中の移動手段)としてのバイクは売れなくなり、国内市場を大きく縮小させた。これが現状である。

バイクの国内販売台数は、1982年の328万5000台をピークに減少を続けている。なお、2019年は36万2000台であり、減少に歯止めはかかっていない。販売台数を落としているのは原付一種であり、駐車場法の改正とは関係ないが、放置駐車車両確認事務の民間委託の影響が大きく、街中からコミューターとしての原付一種が淘汰されつつある

日常の移動手段として利用率が減少
このグラフは、パーソントリップ調査のもので、全国の都市で人々がどのような目的でどんな交通手段を利用しているかを調べた結果だ。1年の平均的な交通特性が見られるが、バイクブームの80年代と比べるとバイクは半減し、減少を続けている。詳しくは、国土交通省 全国都市交通特性調査を見るとよい。

バイク駐車場は9倍以上も増えたがまだまだ足りてないのが現状

自動二輪車駐車場の箇所数・駐車場台数

注1 駐車場の箇所数及び台数は、都市計画駐車場、届出駐車場、附置義務駐車場、路上駐車場の合計値
注2 専用は、自動二輪車のみが駐車可能なスペース
注3 併用は、自動二輪車及び自動車(四輪車)がともに駐車可能なスペース



保有台数1000台当たりの駐車場台数(平成30年度末)

注1 専用は、自動二輪車のみが駐車可能スペース
注2 併用は、自動車及び自動車(四輪車)又は自転車がともに駐車可能なスペース

出典:国土交通省「駐車対策の現状」(2020年1月27日)
Point
・2006年(平成18年)に駐車場法が改正
・駐車場の数は9.4倍も増えた
・保有台数あたりの駐車場台数はまだ少ない

2006年以降、駐車場は着実に増えたものの、自動車に比べるとまったく足りていない。自動二輪車(50㏄超)が停められるのは1000台あたり、たったの11台。停められれば1.1%の幸運を手にしたことになる。自転車との併用である自転車等駐車場に停められるバイクは原付一種(50㏄以下)が主だ。株式会社アイケイコーポレーションによる調査結果には、改正道路交通法後のオートバイユーザーの意識変化が記されている。

次の記事では、このような現状をうけ、二輪車業界がどのように動いたのかについて説明しよう

Writer 田中淳磨(輪)さん

二輪専門誌編集長を務めた後、二輪大手販売店、官庁系コンサル事務所への勤務を経て独立。三ない運動、駐車問題など二輪車利用環境問題のほか若年層施策、EV利活用、地域活性化にも取り組む
Facebook