
【スポーツライディング好き必見!知っておきたいライテク用語】Part04:アプローチ
スポーツライディングの世界には、よく使われる専門的用語や表現が多数存在する。もちろん、その意味を知らなくても、ライテクが上達しないわけではない。しかし、知っていれば頭での理解度はより深まり、ライテクを”吸収”する助けとなる。安全で確実なライディングスキルアップのために、”用語”という武器も手に入れよう。
PHOTO/H.ORIHARA TEXT/T.TAMIYA
取材協力/ドゥカティジャパン
0120-030-292 https://www.ducati.com/jp/
積極的な車体への入力だが無意識の中に存在する!?
解説が難しいテーマが“プッシングステア”。幼少期からバイクに乗ってきた私にとっては、無意識かつ当たり前にやってきた操作で、呼吸の方法を聞かれているようなものなのです。
とはいえ、ステアリングへの入力をやっていることだけは間違いなく、振り返ってみればモトGP時代のレース後に右の手のひらが痛くなったことや、グローブが短期間で傷んだことも、これに起因しているのだと思います。
ちなみにステアリングへの入力は、意識しすぎると途端に走りのリズムを崩しやすいため、強く押すとか操舵するのではなく、“セルフステア”でイン側に切れようとするステアリングの動き抑えるような感覚で操作することをオススメします。
プッシングステア:ステアリングに入力しなければバイクは曲がらない
本誌で連載を持つエンジニアの辻井栄一郎さんは、「ある程度の速度以上で直進するバイクは、体重移動ではなく、曲がりたい方とは反対方向に微少なステアリング入力を加える“プッシングステア”により、バランスを崩すことで傾きはじめ、旋回力が生まれます」と解説する。
これは、“セルフステア”が発生している旋回中も同様で、イン側のグリップを押し支えるように微少な入力を加えることでこのバランスを崩す操作が、“プッシングステア”なのだ。

セルフステア:強くなると車体を起こすモーメントが発生してしまう
基本的な定義は、直進中のバイクが左右どちらかにふらついた(傾いた)とき、その方向へステアリングが自然に切れる現象のこと。バイク自身がイン側に前輪をわずかに転舵して、バランスを保とうとしているのだ。
“セルフステア”は、強くなると車体を起こす力になりやすいため、ライダーは無意識であってもごく微少の“プッシングステア”で“セルフステア”の量を調整し、バンク角を安定させている。

ステップワーク:鋭く曲がるきっかけを積極的に作っていく
実はステップに対する荷重を左右で変化させただけでは、重心位置は変わらず、バランスを取る(あるいは崩す)ことにつながらない。
二輪動力学から見た“ステップワーク”の目的は、ステップを踏んだ反力で身体を反対側に動かし、これにより重心位置を移動させることにある。
また中野さんは、「“ステップワーク”と聞くと、左右のステップを瞬間的に踏むような操作を思い浮かべるかもしれませんが、実際は常に荷重していて、その左右配分や荷重量を微妙に調整し続けているイメージ」と話す。

切り返しではステップを踏み込みリアサスの反力を使う
S字などの切り返しでは、大きな重心移動が必要になるため、切り返す前のコーナー立ち上がりでイン側のステップを強く踏み、その反力で身体を一気に反対側へと移動させる。
「ステップを踏んでリアサスを縮めて伸びるタイミングで反対側に移動する」という意識を持つと、リズムを掴みやすい

特に高速コーナーの進入では有効になる
ストレートエンドのコーナーに進入する際に、マシンをアウト側にごくわずかに振ると、イン側にリーンさせるタイミングが掴みやすくなる。このときに重要なのが“ステップワーク”による下半身の動き。反力を使うことで、リーンの重心移動を生み出している。

中野さんはブーツに穴が開くくらいステップワークを多用している
「レーサーとしての現役時代、ブーツのソールが傷むのは必ずこの場所で、穴が開いちゃうことも……」と中野さん。
ステップは母趾球あたりで踏むのが基本で、ステップは先端も積極的に使うため、アフターパーツのほうが操縦しやすい傾向にある。
