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【Thinking Time】⑬ライダーなら知っておきたい! なぜなに「政治とバイク」

*BikeJIN vol.221(2021年7月号)より抜粋

先日、超党派の集まりとして「バイカーズ議員連盟」が設立された
これまでも、与野党の中ではオートバイ議員連盟が活動してきたが、
それとは一線を画すライダー視点の議連として期待されている
今回は、政治家とバイクという視点でその経緯と活動について紹介する

法律の改正や規制緩和は議員の仕事
与野党の国会議員がバイク振興を後押し

 今回のテーマは「政治とバイク」。両者にはかけ離れたイメージがあるが、実際はかなり密接だ。始まりは、全国オートバイ協同組合連合会(通称AJ)を立ち上げた吉田純一氏の活動だ。92年、AJ発足時に掲げた3つの目標「高速道路のバイク最高速度引き上げ(00年実現)」「大型二輪免許の教習所取得(96年実現)」「高速道路の2人乗り解禁(05年実現)」のうち、警察庁が安全性を理由に拒んでいた高速2人乗りについて、吉田氏が高市早苗衆院議員に相談したところ「議連を作らないと難しい」と助言を得た。その後、故小里貞利衆院議員にお願いし、01年に「自由民主党オートバイ議員連盟」が作られたのだ。 

こうした国会議員によるオートバイ議連は民主党(当時)、日本維新の会、公明党と広がりを見せた。著名な政治家も多数参加したが、中でも自民党時代の松浪健太衆院議員(初代事務局長)は二輪業界や関係省庁とヒアリングを重ね、ケンタオートバイビジョンからオートバイ国家戦略へ、さらにはオートバイ行政推進一括法へと具体化させた。党派を超えた合同勉強会も行われ、「我が党でも非常に珍しく頻繁に集まる議連(三原じゅん子事務局長)」として00年代から精力的に活動した。勉強会では、法規制を所管する関係省庁担当者に資料を見せながら「こういう理由で現状はおかしい」ということを二輪関連団体が指摘し回答を求めた。 

その効果は大きく、大目標であった高速道路の2人乗り解禁のほか、ETC一般モニター運用(05年)からの二輪車ETC車載器の市販実現(06年)と今に続く車載器購入助成キャンペーン、軽自動車税の一年先送り(14年)、AT小型限定免許の取得簡便化(18年)、定額ツーリングプラン(17年)からの定率プラン計画発表(21年)とバイクが抱える諸問題の解決・改善を実現してきた。

オートバイ議員連盟の誕生はAJ前会長の吉田純一氏から始まった
1984年に大阪オートバイ事業協同組合を作り、90年代にAJを作った吉田純一氏が高市早苗議員(生粋のライダー)の助言から故小里貞利衆院議員(ハーレーダビッドソンの愛好者)にお願いして発足したのが自由民主党オートバイ議員連盟だ

ケンタオートバイビジョンが政府のビジョンになった
松浪健太氏(現大阪府議会議員)は自民党在籍時にオートバイ議連事務局長を務め、二輪業界とケンタ・オートバイフォーラムを主導。国内新車販売100万台を含むビジョン「オートバイ国家戦略」は二輪車産業政策ロードマップの基になった

自民党オートバイ議員連盟で事務局長を務める三原じゅん子参院議員(自由民主党)。モータースポーツにも造詣が深い

高速道路2人乗りの実現に動いた吉田純一氏に「議連を作るべき」と重要な助言をした高市早苗衆院議員(自由民主党)

保有数の多いバイクの政策は 広く国民のためにもなる

 バイクが抱える諸問題の解決・改善のための大きな舞台となっているのが、16年に自民党の政務調査会に設立された二輪車問題対策プロジェクトチーム(通称PT)だ。これは勉強会ではなく、党として正式に政策を議論する場として設立され、議連所属の議員、関係省庁担当者、二輪関連団体らが継続的かつ実効的に課題に取り組んでいる。警察庁や国交省を含め、ここで質問された案件に対しては「検討します」で逃れることはできず、次回のPTまでに省内で調整し具体的な答弁を用意しなければならない。こうしたPTを繰り返すことが法改正や規制緩和につながってきたのだ。 

では、なぜバイクの利用環境改善のために政治家が動いてくれるのか?かつて吉田氏は「約1200万台(当時)というバイクの保有台数があり、通勤・通学、買い物の足、配達業務など生活に密着している。二輪業界のためだけでなく広く国民のためになるから」と説明してくれた。
 

また、経産省の「自動車産業戦略2014」にバイクが初めて組み込まれたことも大きかった。「世界シェアの高いバイクは国益になる。保護すべき産業である」という視点は、それ以前の政府にはなかったものだ。現状の課題や目指すべきゴールがまとめられた二輪車産業政策ロードマップが作られ、マザー工場たる国内市場の振興が必要とされ、そのためには利用環境を改善すべきであると明記された。今回設立されたバイカーズ議連の目的が「ライダーのライダーによるすべての人々のための持続可能な社会の実現」ということも大きな意義を持つだろう。バイクを愛好する議員がこんなに大勢いること、バイカーズ議連の活動がライダーのみならず国民の生活に寄与するということは、バイク関連政策の公共性を高めていくことにつながる。 

全国の議員が堂々とバイクに乗り、論じ、ライダーの視点から「これはおかしい。不平等だ」と動いてくれれば、諸問題の解決も早まりそうだ。筆者もいちライダーとして、彼らを応援し共に助け合っていく中で、広く一般の方々のバイクに対するイメージが改善されていくことに期待したいと思う。

江東区議会公明党が快挙! 東京都初の条例改正を実現
区内の自転車駐車場に自動二輪車も停められるように動いた江東区議会公明党。AJ東京の要望を聞き、区議会で東京都初となる条例改正を実現した。公明党はライダーの利用環境改善に協力的だ ※ 写真はAJ 東京NEWS(’18 年8月2日)より引用

群馬県の三ない運動を撤廃! 須藤昭男元県議はみどり市長に
群馬県議会議員(自民党)の時に県下の三ない運動を撤廃し群馬県交通安全条例の制定に動いた須藤昭男氏(現みどり市長)もライダーだ。初心運転者事故が多い要因に三ない運動を挙げ、「三ない運動で生徒を守る」は交通問題の先延ばしだと主張した

日本維新の会にもオートバイ議連 石井章事務局長は必ず質問
日本維新の会オートバイ議員連盟事務局長の石井章参院議員はバイカーズ議連副会長にも就任。かつてバイクに乗っていた石井氏は民主党時代にもオートバイ議連副会長も務め、参議院の経済産業委員会では必ずバイクに関連する質問をしてくれている

バイク大好き! 筋金入りのライダー議員が集結! バイクのレジャー、レースの普及にも期待だ

 3月23日、バイク免許を持つ国会議員が超党派で「バイカーズ議連(略称BB議連)」を設立した。これまでもオートバイ議連は与野党にできていたが、党派を超えて、バイク免許所持議員だけで議連が作られたのは初めてのことだ。二輪車産業政策に則ったこれまでの議連とは違い、ライダー視点による身近な問題の解決、マイノリティを含めた二輪関係者やライダーとの直接的な交流や支援、さらには安全運転・整備講習、ツーリングの開催などモノよりも、ヒト、コトを広く見た活動となるようだ。現在、21名の国会議員が所属し、会長は元スズキ社員の大岡敏孝衆院議員が務める

自民党オートバイ議連会長、二輪車問題対策プロジェクトチーム座長の逢沢一郎衆院議員は高速料金問題にも言及

駐車問題に関し「自転車、クルマと比べバイクは法律的に平等ではないのでは?」と発言したAJの石井大事務局長

日本モーターサイクルスポーツ協会会長の鈴木哲夫氏も来賓として参加。お金がかかるレース活動への支援も求めた

後列左から/須藤元気(参議院・無所属)、伊藤渉(衆議院・公明党)、穴見陽一(衆議院・自由民主党)、磯崎哲史(参議院・無所属)、松田功(衆議院・立憲民主党)、しのはら豪(衆議院・立憲民主党)
前列左から/梅村みずほ(参議院・日本維新の会)、横沢高徳(参議院・立憲民主党)、大岡敏孝(衆議院・自由民主党)、小熊慎司(衆議院・立憲民主党)※敬称略

Writer 田中淳磨(輪)さん

二輪専門誌編集長を務めた後、二輪大手販売店、官庁系コンサル事務所への勤務を経て独立。三ない運動、駐車問題など二輪車利用環境問題のほか若年層施策、EV利活用、地域活性化にも取り組む
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