ツーリングを楽しむ全てのバイク乗りのためのWebメディア

BikeJIN

安心。信頼。そして本来のパフォーマンスを引き出す
それがヤマハの純正オイル・ヤマルーブだ

言葉にすれば簡単だが、それを実現するのは恐ろしく難易度が高い
誰が、どこで、どう乗ってもエンジンを守る。それがヤマルーブの使命である

エンジン×ヤマルーブエンジン×ヤマルーブ

せん断性能、酸化・熱安定性、油膜保持性を高めることでエンジンを守り、エンジン本来の性能を引き出す。それがヤマハ純正オイル「ヤマルーブ」だ。世界統一ブランドとして実際に各国で使用されており、安定した性能を発揮

連載記事リスト
VOLl.1 細部へのこだわりは、創業当初から
VOLl.2 乗って語って作り込む「乗り味」
VOLl.3 目指すは「制御を感じさせない制御」
VOLl.4 オイルはエンジンの〝液体パーツ〞
VOLl.5 機能を素直に美しく表現する

vol.4

オイルはエンジンの〝液体パーツ〞

「純正」の名の下に
オイルに求められるもの

これは、車両メーカーであるヤマハ発動機が作っている純正オイル「ヤマルーブ」の話だ。

世の中にはさまざまなオイルメーカーがあり、さまざまなオイルが流通している。それらの非純正オイルと、ヤマハ純正オイルとは、いったい何が違うのだろうか?

最大のポイントは「車両本体とセットで考えられているかどうか」に尽きる。

そもそも今回、ヤマハ純正オイル「ヤマルーブ」についてお話を伺ったのは、ヤマハ発動機エンジンユニット品質革新技術部三浦透さんとエンジンユニット技術部の矢代善伸さんのおふたり。

彼らが所属している部署は、社内では「エンジン実験」と呼ばれており、エンジンをテストして性能を作り込むのが主業務である。いわゆるエンジニアであって、「オイル開発部」ではないのだ。

「今も昔も、そういった部署はありません。オイルの開発は、エンジン実験と並行して行われています」と矢代さん。

それはつまり、ヤマハはエンジンとオイルをセットで考えているということ。これらふたつは切り離すことができない密接な関係だと捉えているからこそ、エンジニアが直接オイルの開発に従事しているのだ。

1963年に世界初のオートルーブポンプが登場

1963年に世界初の
オートルーブポンプが登場
かつて2ストロークエンジンはガソリンにオイルを混ぜて燃料とする混合給油が当然で、さまざまな面でネックになっていた。64年、ヤマハはガソリンとオイルを別々に給油する分離給油システムを実用化し、市販車に搭載。潤滑に対して当時から強い意識を持っていた

「74年に入社して、エンジン実験の仕事をしていたら、いきなり上役に『オイルをやれ』と言われたのが発端なんですよ。

オイルは化学の領域。でもヤマハに入社する人は機械工学科出身が多く、化学科は少なくてね」

矢代さんが命じられたのは、当時の主流である2ストロークエンジン用純正オイルの開発だった。すでにヤマハ純正オイルを始め市場には多くのオイルがあったがそれらを精査・検証しながら、車両メーカーとして品質を保証できるオイルの基準を作り上げていったのだ。

1962年の全日本で潤滑ポンプを導入

1962年の全日本で潤滑ポンプを導入
オートルーブ=分離潤滑は、もともとレーシングテクノロジーのとして開発されたものだった。61年には世界GP・フランスGPに、62年には全日本にも分離潤滑のマシンが登場

それは、一般的に言われる「高性能オイル」とはまったく異なる次元にある。矢代さんは言う。

「エンジン本来の性能を引き出すことはもちろんですが、それだけではとてもじゃないが足りない。『このオイルなら、どのヤマハ製バイクで、誰が、どこで、どのように使っても不具合が生じません』ということを保証しなければならないんです」

これが想像以上に困難なことであり、純正オイルの純正たるゆえんである。それについては詳しく後述するとして、もうおひとかたの三浦さんだが、彼は矢代さんの「後輩」にあたる存在である。

三浦さんは83年にヤマハに入社し、当時開発が本格化し始めていた4ストロークエンジン実験の仕事に就いた。

偶然にも三浦さんは、矢代さんと同じくヤマハでは希少な化学科出身だった。4ストエンジンの高性能化に伴って4スト純正オイルも見直されることになった時、化学畑の三浦さんに白羽の矢が立てられた。

こうして「2ストオイルは矢代」「4ストオイルは三浦」という2枚看板が成立することになったのである。

エンジンオイルの開発は空冷2st.123㏄エンジンを使用

エンジンオイルの開発は
空冷2st.123㏄エンジンを使用
2ストオイル開発にあたって指標にしてきたのは空冷単気筒123㏄エンジンだった。オイルに過酷なエンジンだから基本性能を磨けるのだ

オートルーブポンプシステムを採用した初めての市販車

オートルーブポンプシステムを
採用した初めての市販車
レースで開発されたオートルーブ。市販車では64年発売のYG1DYA-6に採用された。分離給油の煩わしさから解放され大きな反響を呼んだ

すでに矢代さんが、2ストオイルの開発を通して「ヤマハ純正オイル、かくあるべし」という基盤を作っていた。

「あらゆる状況において不具合を起こさないこと」というその基盤は、三浦さんが担当することになった4ストエンジンオイルの開発でもそのまま受け継がれた。

2ストと4スト、エンジンの種類こそ違えど、「純正」の名の下でオイルが満たすべき要件は、変わることがなかったのである。

お話を伺った方

エンジンとオイルはワンセットだという考え方

ヤマハ発動機
エンジンユニット品質革新技術部
三浦透さん

83年、エンジン開発に携わりたくヤマハ入社。以降、4ストエンジンの性能を開発する実験を担当。並行して純正オイルの開発にも携わり現在に至る

お話を伺った方

ヤマハ発動機
エンジンユニット技術部
矢代善伸さん

74年に入社し、2ストエンジンの性能を開発するエンジン実験に配属されると同時に、純正オイル開発を命じられ、ヤマルーブの礎を作り上げた

エンジンを守るのがオイルの最大の役目
それがユーザーを守ることだから

「どのヤマハ製バイクで、誰が、どこで、どう使っても、オイルが原因の不具合が起きないこと」

これは非常に困難な要件である。「ヤマハ製バイク」とは、排気量では50㏄から1800㏄まであり、カテゴリーではスクーターからスーパースポーツまである。

「誰が」とは、免許を取ったばかりの若者から熟年のベテランまで、あるいは免許を取ったばかりの熟年や、若きベテランもいるかもしれない。さらに言えば、日本人かもしれず、外国人かもしれない。

「どこで」とは、日本かもしれず、海外かもしれず、ストリートかも、サーキットかもしれない。

「どのように」とは、ものすごく低速で走り続けるのかもしれず、サーキットで高回転走行するのかもしれず、アイドリングし続けるのかもしれない。

つまり、ありとあらゆるバイク、ありとあらゆるユーザー、ありとあらゆる場所、ありとあらゆる使用状況下を想定して、それでもオイルを原因とした問題が起きないことが、ヤマハ純正オイル「ヤマルーブ」のあるべき姿なのだ。

厳しい開発テストで鍛え上げられた2st用
混合オイル、オートルーブスーパーオイル
エンジン本来の性能を引き出すことはもちろん、始動性を始めとするすべての面でエンジンの信頼性を維持する。低温始動性に優れ、耐熱・耐摩耗性が良く、過酷な運転にも十分耐えるスーパーオイル。ヤマハオートルーブはヤマルーブファミリーの国内2st油だ

船外機や汎用エンジンでも性能をフルに発揮

船外機や汎用エンジンでも性能をフルに発揮
ヤマハの強みは、「発動機」という社名が示すように、幅広いエンジンを作っていること。それぞれに難しさがあり、それをカバーすべくオイルの性能も磨かれる

外国を挙げたのも決して大げさな比喩ではなく、ヤマハのバイクが世界各国を走っていることを考えれば現実的な可能性だ。

ヤマルーブは世界統一の純正オイルブランドであり、日本のヤマハ本社に設けられたオイル分科会がその品質を保証している。

お膝元である日本のみならず、諸外国も含めての「ありとあらゆる」だと思えば、この要件が、いかに過酷かが想像できる。

もっと言えば、あらゆるヤマルーブが、あらゆるヤマハ製バイクに注ぎ込まれる可能性も考慮しなければならない。

4ストローク用のヤマルーブは、現在、1リットル1458円の「スタンダードプラス」から、1リットル3672円の「R S 4 GP」まで、5種のラインナップがある。

「YZF‐R1のようなスーパースポーツモデルにはRS4GPのような高級オイル」というチョイスがしっくりくるが、実際にそう選択されるとは限らない。

「ヤマハの純正だから」ということで、R1にスタンダードプラスが使われる可能性も十分にある。それでもR1が不具合を起こさないことが必要なのだ。

つまり、廉価なスタンダードクラスのオイルでさえも、最高峰のスーパースポーツモデルのエンジンを支えるだけの底力を持っていなければならない、ということだ。

オイルフィラーキャップにYAMALUBEの刻印が──

オイルフィラーキャップに
YAMALUBEの刻印が──
いくつかの車種のフィラーキャップには、ヤマルーブのロゴが刻印されている。純正オイルを強く推奨するヤマハの姿勢、そしてヤマルーブの性能に対する自信の表れでもある

誰にでも、世界のどこで使われても大丈夫4st用オイルでも根幹は変わらない

誰にでも、世界のどこで使われても大丈夫
4st用オイルでも根幹は変わらない
高回転域も低回転域も。ビギナーもベテランも。日本でも、諸外国でも。あらゆる使用状況下で安定してエンジン性能を引き出すヤマルーブ。2stオイルの開発で培われた基本的な考え方が、4stオイルにもそのまま受け継がれている

オイルは、ベースオイル(基油)に添加剤を配合してできている。オイル性能を決める根幹であるベースオイルを、ヤマハが自製しているわけではない。オイルメーカーに依頼し、ヤマハが求める性能を満たすベースオイルを提供してもらう。

ベースオイルの組成から、配合する添加剤に至るまで、非常に細かく、しかも高いレベルの要求を出すのがヤマハ流だ。

「かなり厳しい要求に応えてもらっています」と三浦さん。化学を理解する — つまりオイルを深く理解している人が車両メーカーでオイル開発に携わっていることが大きな助けとなり、スタンダードクラスと言えども、先に述べたような「ありとあらゆる使用状況下で不具合を起こさない」だけの性能を誇っているのだ。

「と言うよりですね」と矢代さん。「オイル開発者の立場から言わせていただくと、R1のようなスーパースポーツモデルのエンジンは、ずいぶんとラクなんですよ」と意外なことを言う。

「考えてみてください。R1のエンジンは確かに非常にパワフルですが、しっかりと水で冷やされ、立派なオイルクーラーまで装備されている。オイル容量もたっぷり確保されている。しかも、あの超高性能をフルに使うのは、わずかな時間です。サーキット走行だとしても、全開にできる時間はそう長くない。

オイルにとって過酷な環境は高出力ではない

オイルにとって過酷な環境は高出力ではない
高出力エンジンは水冷され、オイルクーラーが装備され、オイル容量も多く、あまり回されず、実はオイルにとってラク。空冷でオイルクーラーもなく全開時間が長いエンジンの方がオイルには過酷だ

逆に、小排気量の空冷単気筒エンジンは、想像以上に過酷です。全開時間が長く、空冷で、オイルクーラーもありません。オイル容量も少ない。オイルにとってかなり過酷な環境なんです」

スタンダードクラスのオイルだからと言って、手を抜くわけにはいかないのだ。

「それなら、スタンダードクラスだけでいいじゃないか」と思いたくなるが、それはやはり違う。高性能なオイルには、高性能エンジン本来のパフォーマンスを引き出すよう、工夫されている。

それでも、純正オイルである。パワーアップといったようなシンプルな目的だけを果たせばいいわけではない。信頼性こそが絶対条件であり「本来のパフォーマンスを引き出す」のは最後の味付けだ。

世界最高峰の舞台からも情報をフィードバック

世界最高峰の舞台からも
情報をフィードバック
現在のMotoGPでオイルに求められる性能は先鋭化している(摩擦抵抗を極端に減らす)が、やはりサーキットは実験場。レースで得た情報は市販オイル開発に役立てられている

矢代さんは言う。「エンジンがオイルに何か言うとしたら、『私を守って』。このひとことですよ」

いかにもエンジニアらしい言葉である。エンジンの立場から、オイルを見ている。オイルのためにエンジンがあるのではなく、エンジンのためにオイルがある、という考え方。そしてオイルは、エンジンを守るためのものだ、と。

それはつまり、ユーザーを守るということに他ならない。「不具合を生じさせてはならない」。矢代さんと三浦さんは、何度もそう繰り返した。

車両メーカーのエンジニアとして、バイクという乗り物のシビアさを知っているからこそ、オイル開発にも全力を尽くすのだ。私たちが安心してバイクを楽しめるように。