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【第3話】ツーリングマップル編集者が語る地図屋の美学「ツーリングマップルの作り方」


普段何気なく使っているツーリングマップル
その地図は誰が、どう作り、1年でどれくらい変化があるのか
一見、大した変化はなさそうに見える
その裏側をちょっとのぞいてみよう!

取材協力
昭文社
http://www.mapple.co.jp/

皆さんこんにちは!ツーリングマップルのマスキです。当コラムもなんだかんだで第3回。ありがたいことです。第1回はツーリングマップルとはなんぞや的なことを、第2回は地図は読み物ですよってことをお話してきました。そして今回は、ツーリングマップルの制作工程について、お伝えしてみたいと思います

ツーリングマップルは毎年更新って知ってた?

そもそもツーリングマップルが毎年更新されてるって、皆さんご存知でしょうか。知ってたとしても「どうせ大して変わってないんでしょ? っていうか、俺のマップルまだ使えるし」と、10年以上前の地図をまだ使い続けてる方も、おられますよね。いやいやいや、分かるんです。いろいろと自分で書き込みしたツーリングマップルには、旅の記憶やネタが詰まってますもんね。それにまだ使っていない(行ってない)ページがあるのに、わざわざ買い替えるのももったいない気がしてきますよね。

今回のコラムの狙いは、そんなみなさんに地図更新・制作の苦労をお伝えして「なんだ、そんなに頑張ってんならしょーがねえな、買い替えてやるか」と思っていただこう、というのものです。まぁ、半分冗談ですけど(半分本気です)。地図の作られ方が分かれば、より地図が使いこなせるかもしれませんし。だって、バイクもその構造を知ることで、より上手く乗れたり、調子が分かるようになるってこと、あるでしょう?

どうやって作ってる?

それではざっくり、ツーリングマップルの地図制作の流れをご紹介します。

まずツーリングマップルには各エリア、「著者」と呼ばれるライダーが一人ずついます。培倶人でもお馴染みの、ホッカイダー小原信好さんや、鉄人カソリさんも著者の一人です。また各エリアには「モニター」ライダーも数名ずついて、年に数回、定期的に情報を提供してくれます。著者は、著者が独自に集めた情報や、モニター情報などをもとに実走取材を行い、コメントや物件の原稿を作成します(=著者原稿・写真参照)。

「著者原稿」

道路の形状に関するものから、コンビニや温泉、キャンプ場情報もあれば、豆知識の追加なども。テキストは打ち間違い、読み間違いを防ぐため、基本的には別途テキストデータをもらい入力している。この字を見ればその必要性も分かると思われ……

ちなみに著者やモニターを取りまとめてくれているのが、編集プロダクションのフィネスさん。関東甲信越版の著者としての取材もお願いしています。ほかにもあれこれお世話になっています。いつもありがとうございます!

さて、著者原稿を反映するだけでは一般的な「道路開通」や「施設の開店・閉店」などの膨大な情報には対応できないので、その辺りは昭文社の情報収集部門が仕入れた情報を使い、別途原稿を作成します(=経年原稿)。

こうしてできた「著者原稿」と「経年原稿」をもとに、地図データを修正します。これも、新しい情報をただ追加すればいいというものではなく、もともとある文字を避けながら、場合によっては削除しながら、時には原稿の誤りにも気付きながら(笑)、文字を配置していくのでなかなか大変な作業です。

反映を終えた地図は、著者やフィネスさん、校正会社さん、そしてワタクシなど各所で確認します。誤りや追加情報があれば原稿を作成し、再度修正・確認を行います。 ……と、細かく書くときりがないので、だいぶ省略しましたが、このような感じで地図ができるわけです。

1年でどれくらい変わるの?

ツーリングマップルに限らず、地図の新年版について「前と比べてどれくらい違うの?(買う価値あるの?)」という質問はよくいただきます。まあそりゃ気になりますよね。バイクだって家電だって、どこがどう変わったのか、それが大事ですもんね。壊れてなければ買い替えなんて検討しない人の方が多いでしょう。

さて、19年版では、さきほど述べた著者原稿、経年原稿以外にも、「赤コメント(観光やグルメ、温泉などの物件情報)」と「ロードサイド店舗」の総チェックを行いました。普段は「何カ所修正したか」なんて、多すぎていちいち数えてないのですが、せっかく総チェックをかけたのでと、校正会社さんがこれらの修正件数を数えてみたそうです(笑)。結果、「赤コメント」は約1000/7000件、「ロードサイド店の修正」は約2000/11000件あったようです。
これに、「著者原稿」で5000件以上の修正(新規コメント含む)があり、道路や一般施設の「経年原稿」はもっと多く、全部ひっくるめると、2万件程度は修正を行っていることに。いや~果てしないですね!(今から来年版のことを考えるとやや憂鬱……)

うずたかく積まれた修正原稿の山。これは終盤のものなので、少ない方だ。フセンの数=修正数ではなく、一つのページに複数の修正が入るところも多い

道路の開通は3月が多い

ところで新しい道路の開通は、3月が圧倒的に多いって、ご存知でしょうか(理由はググってみてください)。それで困るのが、ツーリングマップルの発売も3月だということ。これはツーリングシーズンが3月から本格化するのに合わせているのですが、3月に出版するには、2月に印刷しなければなりません。なので事前に都道府県が出す情報をこまめにチェックしたり、計画図を入手したり、多くの新規道路を入れるように動いています。もちろん大規模高速道路などは、未定であっても計画線という形で入れています。

夏ごろまでに開通する予定の道路は実線のコメント付きで表現。高速道路は2、3年後予定のものも計画線はできるだけ表示している

紙地図は、印刷を始めた瞬間から古くなってしまいますが、このように毎年新鮮なものを頑張って作っていますので、ぜひ積極的に買い替えをご検討くださいませ!

Twitter:@touringmapple_s

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